毎晩の色

自分との戦い

フローシャイムのインペリアル

 

 

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4月の終わりにユニオンインペリアルというジャパンブランドの革靴を買った。

西武池袋本店の紳士靴売り場をうろうろしていたら、

ベテランの店員さんに勧められたのがきっかけだ。

ハンドソーン製法とか、あまり日本らしくない、色気のある靴だと聞いたけれど、

素人の俺にわかったのは、試着したときに感じたかつてない軽さと、革の柔らかさと、

履き心地のよさ。

そして決して安いわけではないけれど、去年就職したばかりの俺にも手が届く価格。

勧められてからというもの、西武池袋の紳士靴売り場には何度も通い、

いくつか同ブランドの他のラストも試させてもらったが、

結局最初にその店員さんに勧められたクォーターブローグというデザインの、

型番"U1108"が、デザインもラストも、最も自分に合っていると判り、

購入に踏みきった。

 

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俺にこの靴を勧めてくれたベテラン店員さんも、

同じユニオンインペリアルのクォーターブローグの色違いを履いていた。

この靴を履いていたら、店員さんが俺にこの靴を勧めたように、

俺も誰かにこの靴を勧めたくなった。

「ユニオンインペリアルの靴はハンドソーン製法であるため、

ソールが他の靴と比較して薄いので、

最も磨り減りやすいトゥはスティールで補強し、

磨り減りを予防することをおすすめ致します」

店員さんはそんな独特の語り調子で、購入時のオプションや、

アフターケアの必要性と、その方法まで論理的に説明してくれ、

俺がまだ持っていなかったケア用品等もいくつかまとめて紹介してくれた。

彼は5月から銀座の三越に異動になったそうなので、

何か相談事があったら俺は銀座に行こうと思っている。

銀座三越の紳士靴売り場には素晴らしい店員さんがいます。

 

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いい靴を手にしたからには、シューケアにもこだわりたい。

購入した日以来、俺は毎週休みのたびに西武池袋の紳士靴売り場とリペア工房に通い、

革靴についての様々な悩みとその対処法を工房の方に教えてもらいながら、

必要なケア用品を買い漁っている。

直近では、鏡面磨きのやり方を一から教えてもらった。

 

新品の靴とケア用品が揃うと、気になってくるのがヴィンテージの革靴だ。

実は西武池袋の紳士靴売り場をうろうろしていたきっかけは、元を正せば、

持っていた靴が壊れたからだった。

その壊れた靴というのが、

以前古着屋で買った1970年代のフローシャイムというアメリカのブランドの、

インペリアルという高級ラインの靴。

 

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高級ラインと言っても40年以上前の中古の靴で、

現在の価格相場はおよそ1万円から2、3万円といったところ。

俺は高円寺中の古着屋をめぐり、

アッパーに傷の少ない状態のものを比較的安く手に入れた。

しかしこれを購入した当時、

革靴のサイズ感覚というものが自分の中にまったく存在していなかったため、

25.5cmのユニオンインペリアルの靴を買った俺には大きすぎるサイズ28cm。

インソールを入れて紐をキツキツに締め上げてもまだ大きい。

靴底も乾燥し磨り減って、弱ってしまっていた。 

それでも俺はこの靴がほしかった。

フローシャイムのインペリアルでなくてはならない理由があった。

 

俺はかれこれ5年間以上ツイッターをやっている。(TwitterID:@satotafta)

ツイッターを始めてから5年間、ずっと見続けているが会ったことのない知人、

というのが何名かいる。

 

「彼」もそんな知人のうちの一人で、俺と同い年の26歳。

フォローした当時は大学生で、現在はとあるセレクトショップで販売員をやっている。

俺の「ファッション四天王」の一人でもある。

その彼が昔一度、「誰か俺から5000円で買わないか?」とつぶやいていたのが、

このフローシャイムのインペリアルだった。

 

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※画像は彼があげていたものを許可なく拝借しました。

 

そこでの商談は残念ながら彼が「やはりまだ履きたい」ということで流れたが、

一度入手しかけたことで俺は余計にこの靴がほしくて仕方なくなった。

 

俺にはヴィンテージの革靴を語る上でよく話に挙がる、「革質」がよくわからない。

確かにフローシャイムのインペリアルの革は肉厚で、

グレインレザーと呼ばれる革で、それが丈夫そうであることはわかるのだが、

では何年代の何の革と比べて、他のブランドのどの革と比べて、

どこがどう違うのか、なんてことは俺には到底判別できない。

素材だけでなく、作りに関してもいくつも靴を見て、履いて、

確かめていないので語ることができない。

ド素人の俺がググって仕入れた情報のみでああだこうだと述べたところで、

人様に不確かな情報を与え、自分が恥ずかしい思いをするだけだ。

 

俺にわかるのは、靴のディテールではなく人の話だ。

革の質ではなく、人の性質だ。

 

サイズをミスし、雨の日に履いて走ったらアッパーとソールが真っ二つになり、

一度は捨てた靴だが、今ならケアして、そうなる前に修理もできるので、

また古着屋をめぐって出会いたい。

 

ユニオンインペリアルのクォーターブローグ、それから、

フローシャイムのインペリアル。

私の信用する人がオススメしている靴なので、私は信用しています。